成長するたびに色んな不安や痛みを覚えていって、今の自分は小学生の頃の自分よりも随分臆病になったような気がした。

何をするのも恐れず、挑戦していたあの頃。

今は何をするのも怖くて、自分がどうしたいかもわからない。

小学生がブランコに乗って楽しそうに笑っているのを眺めながら、そっとカーテンを閉めた。

その時、電話が鳴った。

電話に出ると、薫からだった。

「今日は無断欠席なんて、らしくない。どうしたの?具合でも悪いの?」

薫は心底心配しているような声で聞いてきた。

なんてしらじらしい。

わかってるくせに。

薫が、私たちの時間を奪っていったくせに。

美鈴の胸が苛立ちでバクバク音を立てていた。

よくない音。

小さく深呼吸をして言った。

「電話ありがとう。大丈夫よ。ちょっと疲れちゃって。」

薫は電話の向こうでしばらく黙っていた。

「今から美鈴んち行っていい?」

それはとても緊張した声だった。

薫らしくない。

正直会いたくなかったけど、今ここで拒んだらきっとずっと薫とは会えないと思った。

それに、このままずっと自分のモヤモヤした気持ちを引きずることに耐えられなかった。

「いいよ。」

ブランコに揺られていた小学生を思い出しながら言った。

「・・・よかった。ありがとう。美鈴の好きな駅前のシュークリーム買って行くから。」

シュークリームと聞いて、お腹がぐーっと鳴った。

感情と本能は別物だ。

ぐーっと鳴ったお腹を押さえながら少し笑った。

「シュークリーム食べたい。待ってる。」

美鈴はそう言って電話を切った。