美鈴の胸は最高潮にドキドキしていた。

戸惑ってる、戸惑ってる、何度も心の中でつぶやく。

「最近、サークルに顔出さないよね。」

その男友達は薫に笑顔で話しかけた。

「うん、ごめん。なんだか最近バイトが忙しくって。」

「皆、薫の顔見れなくて寂しがってたぞ。来週飲み会あるから来いよ。」

「そうだね。来週はなんとか時間作るわ。」

薫はそう言いながら髪を掻き上げた。

またいい香りが周囲に広がる。

チラッと拓海を見た。

拓海は表情を変えずに薫に言った。

「久しぶり。」

薫は少し笑った。

「久しぶりね。元気?」

「まぁね。」

拓海も少しだけ笑って答えた。

ただそれだけなのに、美鈴にはひどく羨ましく感じた。

私には何か声、かけてくれるのかな。少しは私にも笑ってくれるんだろうか。

薫達が談笑している横で、会話にも入れず、身を潜めていた。

「君、ここの学生だったんだね。」

ふいに拓海が話しかけてきた。

恐る恐る彼の顔を見上げる。

拓海はじっと美鈴を見ていた。

体が硬直する。

どうして、こんなにも緊張するんだろう。

「あなたもここの学生さんなのね。」

必死に笑顔をつくった。


「薫と友達?」

薫・・・?

呼び捨てするほど親しい間柄なの?!

モヤモヤと思いながら、必死に頷いた。

「あれ?こちらの二人も知り合いなの?」

急に男友達が美鈴と拓海を交互に見ながら愉快そうに話かけてきた。

なんだかうっとうしい感じ。

苦手なんだよね。こういうタイプの男。