美鈴は、何も言わず、ただ拓海を見返した。

「そうなんだ。」

拓海は前髪を掻き上げた。

きっと困ってるんだろう。

「だけど、大丈夫、ここのは絶対食べれる。」

どこからその自信は来るんだろう。

拓海のきれいな横顔を眺めながら、もつ鍋うんぬんよりもこの人と一緒にいられるならそれでいいって思った。

「そうだね。食べられる。そんな気がしてきた。」

美鈴はぐつぐつと音を立て始めた鍋を見つめた。

「お酒は飲める?」

拓海はカウンタに立ててあったメニューを美鈴に見せた。

「うん。少しね。あなたは?」

「結構飲むよ。」

拓海の白くて長い指が、メニュー表を這う。

その指にドキドキしていた。

「何飲む?女子はやっぱカクテル系?」

「生中でいい。」

拓海は、美鈴の方に顔を向けた。

近くて、思わず美鈴はうつむく。

「いいね。僕もとりあえず生中。」

拓海は嬉しそうに見えた。

二人で乾杯してジョッキを口につける。

苦くて痛い液体が流れていく。

こうして、拓海と二人でビールを飲み交わしてるのが夢みたいだった。

こんな日がくるなんて、出会った時は想像すらしなかったのに。

「食べよう。」

拓海は美鈴の分をお椀に入れてくれた。

もつ肉は少なめに寄って入れてくれる拓海の所作一つ一つに胸がはじけそうだった。

大好き!と何度も叫びそうになる。