それは儚い願いかもしれない。あと、1年生きたい。明日を明後日を生きることは多くの人にとっては容易いことだ。何かの事故や事件に巻き込まれた例を除けば、この国においてはわたし達の年齢からあと六十年も寿命は残ってる。あとどの位生きるかを生きれるかを指折り数える人のほうが少ないと思う。だけど、非現実な出来事か、誰にも降りかかる可能性のあることかもしれないけど、この部屋で、1日1日指を折って生きる青年の姿を私は今日も遠巻きに眺める。その姿を見る度に泣きそうな女性の顔は今日も酷く歪んでいた。彼によく似た二重まぶたの大きな瞳が腫れ上がるほど彼女は毎日その瞳から涙を流す。