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 久しぶりの逢阪との食事は、まわらない寿司屋だった。

 のれんをくぐり、高級感漂うそのお店のカウンターに座ると、目の前には透明で保冷機能がついているような入れものがあり、そこに新鮮な魚の切り身が並んでいる。

 また、店内には水槽があり生きた魚も泳いでいて、その1匹と目があった……ような気がした。

 目に入ってくるメニューを見てギョっとする。

 [まぐろ 一貫 1,300円]

 ぱくっと1口2口で食べられちゃうようなお寿司が、1,300円?

 それに、あっちの〝時価〟ってのは…何?

「何が食いたい?」

 ただでさえなかった食欲が一層なくなってしまった。

「…………」

「大将、いい感じによろしく。この子の前祝いなんだ」

 逢阪が大将と呼んだ、カウンターの中の白衣に白い帽子を被った年配の男性が頷いた。

 周りを見れば、大人しかいない。中学生の私は完全に場違いだ。

 前祝い……?

「喜べ。化粧品メーカーとの契約がとれそうだ」

 化粧品?14歳なのに?

「契約期間は、とりあえず1年」

「い、1年…!」

「不服か?」

 不服なものか。

「私でいいの?」

「……なに?」