「とっておきの1枚」

 モモはすぐに悪巧みしているような顔に戻った。

 見せてきたスマホの画面には、いちると私の2ショット写真が映し出される。

 多分、あの時だ。遊園地でラインのIDの交換をしていて、いちるがスマホを覗き込んできた瞬間。

「寄り添った恋同士人のように見えるでしょ?いちるは雑誌のインタビューで彼女いないしデートもしたことないって言ってたのに、こんな写真が出ちゃったら、噓つき呼ばわりされちゃうねぇ」

 ニヤリと笑うモモ。

「モモ、今すぐ写真消して…」

「あんな場所で、鈴ちゃんに声をかけてきた軽率ないちるが悪い」

「だからって、隠し撮りして、それで嘘流していいの?ありもしないことでっちあげて楽しい?」

「黙れチビ」

「……信じてたのに。モモのこと」

「信じる?やめてよ、キモいから。あーあ、日下くんを取り込めてたら、もっとやばい写真だって撮れたのにな」

「………!?」

「たいがいの男は、私が甘えたらなんでもしれくれるんだよぉ?」

「なんでも?」

「男使って、あんたを傷物にするくらい楽勝なんだから」

「………!最低っ!大地をそんな目的で利用しようとしたの?」

「初めての相手は幼なじみでイケメンの日下くんにしてあげようっていう私の粋なはからいだったんだけど」

「………!」

「もう、他のやつに頼もうかなー。あんたが商品としての価値なくなるような写真が手に入れば、私はそれで良いわけだし」

「………っ」



 ………………友達だと、思ってたのに。



「おい、お前ら」

 モモと私だけがいる教室に、浅倉がやってくる。

「もう全員移動終わってるぞ。なにやってんだ?こんなとこで」

「すみませーん、すぐ行きます!」

「ったく、念のため他の空き教室もまわってみるか……」

「くたばれ、ノラネコ」

 そう言って、モモが教室から出ていった。

「な、なんだ?野良猫がいたのか?んん?」

 浅倉が不思議な顔をしてあたりを少しだけみまわしたあと、首をかしげて教室を出て行った。