鳥肌がたった。目の前にいるこの子は、なぜ満面の笑みを浮かべているのだろう。

「もっと、見たい。見せてよ。そういう顔」

「は……?」

「全部、鈴ちゃんの思ってる通りだよ。あのはり紙も、写真も、私が用意したの」

___!!

「絶望した?したよね?友達に、あんなことされて。たった1人の、やっとできた女の子の友達だったのにね?」

「………」

「あれが拡散されたらどうなるかな?いちるのミステリアスなイメージ崩れるよね。遊園地デートなんて、普通の男の子感丸出し。ファン減るかもね。減るだろうね!!」

「なんで……そんなこと言うの?」

「全部、あんたのせいじゃん」

 そう冷たく言い放ったモモは、もう、笑っていなかった。

「私のせい?」

「私、何度か見たんだよね。あんたが原宿でスカウトされてるとこ」

「………!」

「うちの中学の制服をあんな着こなし方してたのあんたくらいだから。すぐにわかったよ」

「………」

「スカウトマン、相手にしてなかったよね」

 たしかに私は、あそこで声をかけてきた人のことは、相手にしなかった。

「衣替えしたばかりの頃」

「!」

「あの逢阪までスルーしようとしてた」

 モモ、見てたの!?

「それは、あの時は私……あの人のことよく知らなかったし」

 ヤバイ人だと思っていたから。もらった名刺のことも、信じていなかった。

「そういうのムカつく」

「え?」

「わかってんの?逢阪に目にとめてもらいたい子なんてごまんといるのに、それを無視するなんて超勿体ないんだから」

「そんなこと言われても……」

「嘘つきはどっち?学校に迎えにきた逢阪のこと、別人ってごまかしたよねぇ?」

「それは、どうしても言えなくって……」

「言い訳とかいらないから」

「モモ………」

「ねぇ、教えてよ。どうしてあんたなの?」

「え…………」

「私が声をかけられてたら、今頃人生変わってたの、私だったのに」

 モモは、苛立っているけれど、どこか切なそうな表情だった。

 これも演技?

 それとも………