「…あのね、私やっぱり」
外に出て通路を歩きながら。
「ダメだよ??」
「えっ…」
「別れてなんかあげないからね」
「…でも…」
「大人は大人同士。可哀想でしょう??七海先生が」
私は可哀想じゃないの??
と言い掛けた。
「別れたくない」
手を取って見詰められる。
「愛芽ちゃんのこと、好きなのに。別れたいなんて言わないで??」
「七海くん……」
また、捨てられそうな子犬のような目で見詰められる。
ふっ、と肩を抱き寄せると、キスをした。
通りかかった子たちが息を飲む。そして耳元で囁いた。
「もしどうしても、阿久津先生のとこに行きたいって言うんなら、僕、校長先生にバラすからね。あることないこと。クビになっちゃうよ??それでもいいの??」
脅しにかかった。
「そんな…それは……」
そうまでして顕奘さんの傍にいたいなんて、そんなこと言えるわけない。
それこそ子供の我が儘だ。
唇を噛み、
「………わかった。七海くんとちゃんと付き合うよ」
「お付き合いしてください、でしょう??」
「…お、お付き合い…してください」
「よし!!じゃあご飯食べに行こう!!」
そんな気分じゃなかったけれど、弱味を握られた。口答え出来る空気ではなくなってしまった。