翌日、次の授業の資料を頼まれた私は、職員室に向かった。
カシャン、と音がした。
顕奘さんが持っていたカップを落として割ってしまったようだった。
「あっ、大丈夫です。危ないですから、いてっ」
拾おうとしゃがんだけれど、少し手を切ってしまったみたいだ。
「あっ、絆創膏持ってます」
鞄から取り出して顕奘さんの手を取って貼る。
誰もいない職員室に二人きり。
私は咄嗟にドアの外に隠れた。
「…阿久津先生…、好きです」
「えっ…」
「私じゃダメですか??」
潤んだ瞳で見詰める七海先生。
困った顔の顕奘さん。
「いや、あの、俺は」
「何してるんだい??こんなところで」
声に、それぞれがハッとする。
「……なんでもありません」
慌てて走り去った。