「ありがとう、その言葉ずっと待ってた!お付き合いよろしくお願いします」
漫画ならハートマークがつくほどの甘えた口調で、これでもか、というほどにっこりと微笑むと、小首をかしげて、聖ちゃんの手を取った。
「えっ!?ああ、うん……」
奴の口元が、ピクリと動いた。
「ふーん??こういうのがタイプか。知らなかったなあ」
棘々しく口元をひきつらせる。
「どっかの誰かさんと違って、格好いいし、優しいし。理想の王子様って感じ!?」
バン!!!
物凄い音がして、また店の客が止まり、視線が集中した。
奴がテーブルを叩いた。
「おっと、悪いな。ハエがとまってたもんで」
言いながら、その『ハエを叩いた』手で聖ちゃんの頭をわしわしと乱暴に撫で回した。
「まあ、よろしく頼むわ。こんな邪々馬だけどな」
言って奴は食べ終わった紙屑を丸めてゴミ箱に放り込み、店を出た。