「どう思う??ひどい話でしょう!?」


さすがに上半身裸で迫られたことは言わなかった。ひと通りざっくりと話し終わり、私は身を乗り出して意見を聞こうとした。


聖ちゃんの口から出た言葉は思いもかけないものだった。


「そんなひどい奴のことなんて、忘れちゃえよ。俺がいるじゃん」


きょとんとする私に、続けて。


「今さらこんなこと言うのも何だけどさ、向こうにいる間ずっと考えてたんだ。ぶっちゃけマナみたいな女の子いないしさ」


咳払いすると、


「もし嫌じゃなかったら、彼女になってくれないかな」


時間が。空気が。
止まった気がした。


こんな素敵な男の子に言われておかしな話だけれど。


あくまで『親友』だったから。


そんなミーハーなタイプじゃない。
けれど一時期、顕奘さんのことを忘れそうになったのも嘘じゃない。


聖ちゃんみたいな人が彼氏ならいいだろうなとか。


顕奘さんだって東京で彼女くらい作ってるよね、もしかしたらお嫁さん連れて帰ってくるかも知れないし。とか。


思ったことはもちろんある。
本当に楽しかったから。


こんなイケメンくん目の前にして、ない方がおかしい。


けれど告白したところで、


「勘違いしてんじゃねえよ」


と、冷たくされたら、全て壊れて終わってしまう。
ならむしろ、親友と割りきってしまおう、と。


無理やり閉じ込めた感情の蓋を、あっさりと開けられてしまった。