数分間、返事のない個室へ向かって、奴らはムカつくことを幾つか言っていたが、
僕はだんまりを決め込み、反応しなかった。
奴らは面白くなくなったのか声かけを止め、トイレから出て行ったようだった。
静かになったトイレ。
やっと平穏が戻る。
ほ、と息を吐き、
食べれなくなった卵焼きを拾って便器の中へ放り込み、流した。
弁当もしまって、昼飯の時間はもう終わり。
とにかく今はびしょ濡れになったブレザーを乾かしたい。
それだけを思い、個室から出た。
しかし、そこでも真正面から水がぶっかけられ、一瞬何が起こったか分からなかった。
ぽたぽたと僕のあらゆる部分から水が滴り落ち、水たまりを作った。
目の前には憎いやつの顔があった。
「まじでださいな、お前」
「俺らが諦めて出てったと思ったんでちゅかー?」
3人が声を潜め、僕が出てくるところを狙ったのだとすぐに理解できた。
僕が迂闊だった。
単純すぎだ。
「霧島くん、俺らとちょっと遊ぼうか?」
Aがニヤニヤしながら僕の腕を引く。
強く強く握られた部分がとても痛い。
そこで僕は諦めた。
ああ、今日も最悪なことが起こるのだ、と。
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