クラスに近づくにつれ、足取りは重くなっていく。

まるで、内履きの中に何キロかの重りが入っているかのようだ。

2年3組のプレートが見えてきて、ああ、もうゴールだ…と落胆する。

僕は、ドアの前で少し立ち往生し、中へ入るかどうか迷う。

しかし、入らなければここまで頑張ってやって来たことが無駄になる。

緊張して汗ばむ手を、引き戸へ伸ばす。

今日は何も起こらないのではないか…そんな淡い期待を胸に抱きながら。

ガララ、と思いの外軽いドアが、学校の創立年数分の傷みを音に表し、

その音に条件反射として振り返ったクラスメート数人と目があった。

そして、すぐにそらされる。

厄介者には関わらないのが一番だと、みんなよくわかっている。

そんな態度を取られても、僕はもう傷つかない。

傷つく、なんていう感情はとっくの昔に捨てたのだ。

早く席について、今日1日の安全を祈ろう。

そう思い、一番窓際の3列目…僕の席がある場所へ足を踏み出したときだ。

ボフンッと、胸に何かが投げつけられ、

そこから舞い上がる白い粉を顔面に受けてしまい、とっさに咳き込んだ。

ゴホッゴホッと盛大に咳をする僕のそばで、「ギャハハ!」と意地の悪い笑い声が聞こえてきて、絶望した。

そして、次は顔面にそれを投げつけられる。

鼻や口からもろに粉を吸い込み、さらに咳き込む。

笑い声は増すばかり。

白い粉、チョークの香り。

使用済みの黒板消しを投げつけられたのだな、と察した。

床に落ちた黒板消しを見つけ、確信へと変わった。

「きったねー」

冷ややかな言葉が僕に降り注ぎ、僕の祈りは神様には届かなかったのだな、と思った。

今日もやはり、よくないことが起こる日らしい。