重たい身体をやっとのことでベッドから起こして、自室を出た。
既にダイニングテーブルに用意されていた朝食を少しだけつまみ、制服に着替え、支度をした。
その間、ずっと体は重く、動きが節々で止まる。
ついでに気分もすぐれない。
だが、その理由を母に話すほどの度胸もない。
負の連鎖から抜け出せずにいる僕は、
今日もいつも通りに靴を履き、玄関から外へ出るのだ。
「…行ってきます」
学校が近づくにつれ、同じブレザーを着た生徒が増えていく。
皆が皆、「おはよう」なんて楽しそうに言いあっている。
トモダチに会えてうれしいのだろうか、
それとも、今日も一人ぼっちではないということに安心しているのだろうか。
どっちなのだろう。
そんなくだらないことを考えながら、うつむき加減で、ようやく学校の校門にたどり着く。
挨拶運動の一環で前に立つ先生たちからの「おはよう」も無視して、
僕は自分の下駄箱へ急ぐのだ。
2年3組、11番。
恐る恐るそれを開くと、中は何の変哲もない僕の内履きがあるだけだ。
慎重に内履きの中も確認して、何も細工されていないことを確かめ、僕はやっと学校の中へ入れる。
第一関門突破。
僕はほ、と息をつき、クラスへ足を進めた。
他の生徒にとってはなんでもない日常。
だが、僕からすれば、日常と言う名の非日常である。
随分と前から、僕の日常は非日常となり、いつしかそれが日常に変化してしまった。
つまりは「馴れ」てしまった。
クラスへ向かう廊下の途中で、
僕は心の中で、今日は何も起こりませんように…と小さく呟くのだ。
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