やっと、3人の暴力から解放されたのは、何分経ったころだろう。

数分だった気もするし、十数分だった気もする。

曖昧だった。

でも、まだ昼休みの時間帯のようで、校舎のほうからは楽しげな笑い声が聞こえてきた。

節々が痛む身体をゆっくりと起こし、立ち上がる。

奴らは満足したのか、先ほど足早に校舎へと戻っていった。

僕も校舎へと足を向けた。

ブレザーはひどい有様だ。

いたるところに土と血が付いている。

まずは、それを洗い流し、ブレザーを綺麗にしなければならない。

そのためにはシャワールームへ行く必要があった。

運動部のために作られたシャワールームは、うら庭から行くには遠い。

そのため、校舎を突っ切り部活棟へ向かわなければならなかった。

できればこの格好で校舎を歩きなくはない。

でも、昼休み終了までの時間が迫っていた。

出来るだけ早い足取りで、僕はシャワールームへ向かうことにする。

校舎に入れば、案の定、女子たちの悲鳴や、ひそひそ声が僕を取り囲む。

だが誰一人として僕を助けようとしてくれる人はいない。

何故なら、みんな僕が面倒な人間だと理解しているからだ。

面倒ごとには首を突っ込まないことが一番。

みんな親からそう言われて、お利口さんに言いつけを守っているのだろう。

数々の視線やひそひそ声から逃げるようにして、シャワールームへ向かう。

ふと、シャワールームに向かう途中に水道場があったと思い出し、

うめき声を上げ続けていたことによる喉の渇きを感じる。

とりあえず喉の渇きを癒してから、身体を綺麗にすることにした。

日中の太陽光が差し込む校内。

もうすでに水道場が見えるところまで歩いてきた僕の目に、

水道場で佇む女子生徒の姿が映った。

長い黒髪が、綺麗だった。