有無を言わせず連れてこられたのは、人気の少ないうら庭だ。

そこで僕の気持ちは急激に冷め、これから何をされるのか分かってしまった。

奴らがうら庭に僕を連れて来たときは必ず。

「遊びま、しょ!!」

「ぅ、ぐッ…!」

Aに腕を引かれていた僕の後ろから付いてきていたBが思いっきり僕を蹴り上げ、

その勢いと痛みで前のめりになって倒れこんだ。

濡れたブレザーに、土が付着する。

「お前ムカつくんだよ。ガリ勉で髪もボサボサ…根暗で友達もいねぇ」

「…っ、」

「少し勉強できるからっていい気になりやがって」

「そ、れは…」

言いがかりだと言いたかった。

いじめられている僕は、何の取り柄もない弱虫だ。

それが悔しくて、僕にもできることを、と見出したのが勉強だった。

それは言わば、僕の逃げ道。現実逃避のための術。

そうさせたのは、お前らだ。

そう言いたかったのに、

頭を思いっきり踏みつけられ、横からは鳩尾へと蹴りを入れられ、

痛みから呻くことしかできなかった。

「ぐ、ぅぅ…!」

さっきの卵焼きみたいに、僕は地面にひれ伏し、土にまみれて汚れている。

さぞかし哀れな光景なのだろうな。

「顔はできるだけ避けろよ。先公にばれたら面倒だからな」

Aが他二人にそう言うと、倒れこんだ僕への容赦ない暴力が始まる。

口の中に鉄の味。

以前に蹴られ打撲した箇所への攻撃。

踏みつけられ、殴られ、蹴られた。

時に罵声を浴び、時に笑い声を浴びた。

痛い、痛い、痛い痛い。

どうして僕がこんな目に。

土まみれになりながら、霞む視界で奴らを見上げる。

僕が何をしたというのだ。

ただ、教室で静かに本を読んでいただけだろう。

それだけなのに、こんな目に合うというなら、

僕の生きる理由って何なのだろう。