後ろから時々ゼエゼエという苦しそうな息づかいが聞こえる。


私の前にいる伊織は未だに息を切らさず快調に走っている。


一番前なので自分のペースでいけるのは数少ない中の特権の一つだ。


「ヨル…」


伊織の手には先ほど脱落したヨルの手鏡がしっかりと握られている。


「大丈夫?」


「え」

いきなり伊織が話しかけてきた。


「まあ…少ししんどいくらい」

いきなりどうしたのだろう?