これは地球のどこかで起こった

あなたとわたしの、物語。

















「……お願い」




今にも息耐えてしまいそうなほどなのに。

目の前の女性はにこりと微笑んだ。




「お願い……この子を、お願い」


「いけません奥様。
奥様がこの子をお守りするのでしょう!?」




無茶なことを言っているな、と自分でも思う。

でも口が止まらなかった。




「……お願いね」


「奥様ッ!」




何度叫んでも。

大粒の涙が溢れても。

自分の声はもう、あなたに届かない。





「……必ずや。
必ずやわたくしがこの子を、お守り致しましょう。

それが奥様…あなた様の最後のお願いですから」




最後のではなく、最期のと自分の中で漢字変換をする。

だって奥様はずっと自分の中で生き長らえるのだから。




「……それでは参りましょうか…」










そう呟き歩きだすけど。

正直不安でしょうがない。

誰も見ていない今この場で泣き叫んでしまいたいほど、苦しくて辛い。

先の見えない未来が怖くて仕方ない。




「でも……お守りすると決めた」




まるでそれは祈りのように。

自分は何度もその言葉を口にした。

自信がないけどやるしかない

未来が見えないけどいくしかない。

自分で未来を、切り開け。





「……さようなら、我が国」





旦那様が愛し。

奥様が愛し。

自分も愛しこの子も愛していた国。

朽ち果てる前に、さようなら。





さようなら。

さようなら。





「……サヨナラ」





その言葉は風によってどこかへ消えた。










☆エルside☆






「うわー!うわーうわーうわー!!」


「うるさいわよ……。
あなたうわーしか言えないの?」


「だってだって……お嬢様ッ!!」




ただ木に登ったぐらいでうるさいんだから。

わたしは溜息(ためいき)をつき枝から下り無事着地を決める。




「お嬢様!ご無事でしたか!!」


「ご無事も何も…あなたの方が怖いわ」




涙を浮かべながらわたしが無事木を下りることが出来たことに安堵する彼女。

家に仕えるメイドの1人だけど…こんなに心配性とは思わなかった。

今度からこのメイドの前では木に登らないようわたしは誓った。





「だってだって本当に心配だったんです!
だってお嬢様が怪我したら……!」


「大袈裟よ。

わたしはずっとこの家で育ってきたから、この木とも友達なの。
何度も上って下りてを繰り返して来ているんだから」


「お…おおおお嬢様!
何度も上って下りてを繰り返して来たなど…何と危ないことを!!」


「…………」





慣れているのにと言ったら

“慣れるほど上ったのですか!?”とまたうるさくなりそうなので、

わたしは何も言わずただ溜息をついた。












「――よろしゅうございますかお嬢様」





あんまりにもメイドがうるさいので家に帰ると。

今度はメイドをまとめるメイド長のオバサンがが部屋の前で待っていて、嫌な予感がした。

予感は的中し約1時間ほどわたしはお説教を受けていた。




何度も聞いた“よろしゅうございますかお嬢様”

この後言うことは勉強の出来ないわたしでもわかる。





「お嬢様は我がソレイユ王国の次期国王。
しかもただの国王ではありません。

国王は国王でも、100代目にして初めての女性の国王様となるのです。

良い加減ご自分の身分をわきまえて行動なさってください」





まるで機械のように話すメイド長のオバサン。

わたしは再び大きな溜息をつきながら頷いた




「ごめんなさい。
以後気を付けます。

わたしはソレイユ王国次期国王の身分を考えて行動します」


「それでよろしいのですよお嬢様」




わたしの心にもない言葉を聞いたメイド長のオバサンは

「それではしっかり国学をお勉強なさいませ」と部屋を出て行った。




……さっさと出てってよ、ふん。











わたしは1人部屋にしては広すぎる部屋の中、

片隅に置かれた机には向かわず、

窓際に置いてあるベッドの上寝転がった。




わたしの名前はエル・ソレイユ。

99代も続く歴史ある国・ソレイユ王国の100代目次期国王。

……予定。




予定というのは未だ国民の中で反発する者がいるから。

生まれてきた時から現在の国王であるお父様は、わたしを次期国王と決めたけど。

国民の半分以下だけど反発する者は多く、

中にはわたしが国王になった瞬間国が滅亡するんじゃないかと言う人までいる。

いくらわたしが勉強出来なくてもそれは酷いと思う。




まぁでも…反発するのも気持ちがわからないでもない。

ずっとソレイユ王国の国王は男だったのだから。

でもそれはたまたま後継ぎが男というだけで。

女がなってはいけないという定めはどこにもない。




でもずっと99代目まで国王は男で。

めでたい100代目を国民は今か今かと待ち続けていた時生まれたのがわたし。

ほとんどの人が『初めての女性での国王だ』と喜ぶんでいたけど。

『女に国王が務まるはずがない』と言う人がいるのも現実。