里香の手は柔らかで温かく、とても優しく丁寧に頬を撫でる。

京子は数々のエステを試したが、いままでにない幸福感を感じさせる技術が里香にはあった。

すごいと思った反面、面白くなかった。


「ご結婚されてるんですか?」と京子は話始めた。


「はい。」この手の質問はよくされる。


「みえないわ。お若いから独身かと思ったわ。」


「いえいえ、そんなことないです。」

「じゃあ、子供さんいるのかしら?」

「はい…中学生の息子が一人います。」

「そんなに大きな子がいらっしゃるのね。」

「はい…」

「……」

京子は腹立たしい気持ちを必死にこらえた。

若くてきれいで、夫と子供がいて、社会的地位と確かな技術、すべてを手に入れているというのに…


このうえ松本も手に入れようなら、絶対に絶対に許さない、不幸にしてやりたいと思った。


日々、退屈ぎみな京子はとても刺激的な感情を味わった。

その後も、この幸せで欲張りな女を陥れる方法を考えた。

里香はそんなことは全く知らなかった。

松本なんてよくある名前、まさか嫉妬に燃える妻の顔を、心を込めて大切にマッサージしていたなんて。