領も疲れていたが、ちひろの声が聞けて、まだ繋がっていたくて嘘を言った。


「僕もちひろさんの事を考えることがあるけど、何も知らなくてびっくりした。」

「うん、そうだね。何も聞かれてないし。何が知りたい?」

「好きな色と誕生日かな?」

そんなことかと、ほっとした。

「私は青色が好き、誕生日は11月29日」

「終わったところだね。」
「うん。」

「夏の京都は楽しかったね。」

一瞬、手を繋いだことを思い出した。
ちひろも同じだった。

「うん。あの時、領くんはお願い事って何書いたの?」

「適当に…書いた。忘れた。ちひろさんは?」

「私も忘れちゃった。」

「ほんと?また何処かいきたいなぁ。」

あなたは気軽に町を歩けないほどの人になっているのに…

「うん。いきたい。」ってちひろは答えた。

来年には主演映画も決まっている。もう二人で町をぶらぶらと歩くのは、ないかもしれないと、ちひろは心の中で思っていた。

「…12月…21日、休みに近くまで行くから…会ってほしい。少し早い、クリスマスしない?…」

恥ずかしそうに領は言った。

「うん。ありがとう。」

二人、笑みがこぼれた。