「……ということで、梅田さんを送っていこうかと」

「……ほう?」



ひと通りの話を聞き、仁科さんは納得しながら頷く。

けれど、ちら、とこちらに向けた視線は呆れているように冷ややかだ。



うう、あの目は確実に、『またお前はそういうことを引き受ける』と呆れてる……。

仁科さんはその言葉の代わりに「はぁ」とため息をひとつつくと、口を開く。



「その役目、俺が引き受けてやる」

「え!?」



まさかのそのひと言に、私たち3人からは一斉に驚きの声が出た。



「い、いいんですか!?」

「あぁ。個人的なこととはいえスタッフの通勤時のこととなれば俺にも無関係なことじゃないしな。梅田、いいか?」

「はっはい!もちろん!」



思わぬ彼の提案に、梅田さんは嬉しそうに頷くと、ぐっと拳を握った。



まさか、仁科さんが自ら梅田さんを送ると言い出すなんて……。予想外すぎて驚きが隠せない。

けど、そっか。スタッフのことで通勤時の問題なら、仁科さんもほっとくわけにはいかないよね。店長、だもん。



分かってる、そう納得できるのに。

嬉しそうにする梅田さんと話す仁科さん、そんなふたりを見ると、また胸の奥に小さな痛みを感じた。