「それにご購入時にじっくりとお選びいただいてるかと思います。それでも粗悪品とおっしゃるようでしたら、お客様と弊社商品部の立会いの元、商品のご確認をさせていただきます。今後の改善のご参考にさせていただきますので」
言いながらにこ、と笑顔を見せるものの、彼は強い威圧感を漂わせている。
きっと購入時には彼の姿はなかったものだから、多少強く言えば押し通せると思っていたのだろう。
実際はどうなのかはわからないけれど、商品も本当に『粗悪品』と言い切れるものではなく、あまり突っ込まれるのもバツが悪いのだと思う。
その証拠に、お客様はそれまでの勢いをなくしグッと言葉をこらえる。
「っ……もういい!こんな店二度とくるか!」
そしてその言葉とともに、八つ当たりのように、近くにあったインテリア備品の本を仁科さんへ投げつけ出口へ向かう。
それなりの分厚さと重みのある本は、ゴッ!と音を立て仁科さんの額にぶつかると、彼のメガネを吹き飛ばす。
「なっ……お客様!お待ちください!!」
さすがにそこまで横暴な態度をされては、こちらだってもう限界だ。
それまで黙って聞いていた私は、その男性を捕まえようと声を荒げ追いかけようとした。
けれど、そんな私を足止めするように仁科さんは腕を伸ばし阻む。