「いらっしゃいませ。本日はどのような商品をお探しですか?」
笑顔で声をかけると、お客様である中年女性は「あら」と嬉しそうに頬を染める。
それはまるで、若い男性に対する反応のように。
女性として扱われない。そんなことには、もうとっくに慣れた。
当然こんな女に寄ってくる男性なんていなくて、私は未だ独身……それどころか彼氏すらもいない。
過去にひとりはいたけれど、それ以外でまともな恋愛経験もない。
頭の中、最初で最後の彼のことを思い出しそうになりながら、それを必死にかき消した。
別にいいんだ。守られたいとか思うタイプじゃないし、結婚したいとかもまだ思わない。
だから別に、このままで。
そう、いいんだ。