「ずいぶん古い記事読んでるな」

「ひぃっ!?」



すると突然、背後から声をかけられた。

てっきりその場に自分ひとりだと思っていた中でかけられた声と、突然横からぬっと出てきた仁科さんの顔。

それらに驚きつい変な声を出す私に、仁科さんは気にとめることなく、パソコンの画面を見ている。



「に、仁科さん……いきなり現れないでくださいよ」

「普通に入って来たけど。気づかないくらい熱心に読んでいたんだろ」



ていうか、近い……。

パソコンを覗き込んだままの彼の低い声が耳もとで響くと、心臓がドキドキとうるさくなる。

そんなこちらの反応には気付くことなく自然と体を離した仁科さんに、照れを誤魔化すように話題を振る。



「そういえば、仁科さんって生まれ育ちも札幌なんですか?」

「いや、地元は東京だ。当初はこの新宿店に勤務する予定だったんだが、札幌店で欠員が出てな。それで札幌に赴任した」



へぇ、もともと東京の人だったんだ……。

そうなにげなくパソコンの画面を見ると、インタビューページの端に書かれている仁科さんの簡単なプロフィールには確かに『東京都出身』と書かれている。

さらにその次には『東京大学卒業』の文字。



「って、仁科さん東大出身なんですか!?」

「あぁ、そうだが」



と、東大って……!

確かに仁科さんならイメージは出来るけど……やっぱり頭もいいんだ。

そう、驚きながらも納得できてしまう。