「じゃあ、互いの無事が確認出来たところで説教の時間だな」

「え!?」



って、このタイミングでお説教!?なんで!?


怒られるようなことをしただろうか。もしかして、重かった!?『痩せろ』って怒られる!?

思い当たることなどこれくらいしかなく、ヒヤヒヤと言葉の続きを待つ。



「お前、『自分なら怪我をしてもいい』と思って彼女を庇わなかったか?」



ところが、彼から発せられたのは予想外のひと言。



「え?なんで知ってるんですか?」

「……やはりか」



はっ!自分で言っちゃった!

『そんなことないです』と嘘をつくことが出来なかった自分の口をハッと塞ぐ私に、仁科さんは呆れたような眼差しを向ける。


すると不意に両手で私の顔をつかみ、あまり柔らかさのない頬を引っ張った。



「お前はバカなのか?そんな細い体で人ひとりを支えられるとでも思ったのか?頭をぶつけて大事故になったらどうする。打ち所が悪ければ取り返しがつかないことになるんだぞ」

「うっ……」



厳しいけれど、正論でもある言葉に反論などひとつもできず押し黙る。



「お客様を助けたのは感心する。だが、自分を犠牲にするのは褒められない」



……確かに、私ひとりじゃ支えきれなかった。

仁科さんが庇ってくれたからよかったけど、私だけでは自分が怪我をしたかもしれないうえに、結局彼女にも怪我をさせてしまったかもしれない。

けど、それでも。