あれだけ勢いよく、しかもふたり分の体重を受け止めても普通の顔をしてみせるなんて……たくましいというか、なんというか。

それでもまずお客様や私の心配をしてくれるところが、また優しいと思う。

そんなことを思いながら、私は彼の背中についた埃をそっとはたいた。



「背中、埃ついてます」

「あぁ、悪いな」



ぶつけた背中を刺激してしまわないように、そっと撫でるように背中に触れる。



……背中、大きいなぁ。

細く見えるけど、しっかりとしていて、硬い。



っていうか私、考えてみればさっき仁科さんに抱きしめられたんだよね!?

咄嗟のことでよく覚えてはいないけれど、抱き寄せた腕の力強さの感覚が、まだ体に残っている。



なんて、考えたら恥ずかしくなってきた!

熱くなる顔を背けると、その動きに対して仁科さんは不思議そうにこちらを見た。



「ん?どうかしたのか?」

「え!?い、いえ……あっ埃取れましたよ!」

「ありがとう」



ジャケットの襟を正すと、仁科さんは「さて」と気を取り直すように話題を切り出す。