「新しい店長は札幌店から異動してくるんでしたっけ。いついらっしゃるんですか?」
「本当は今日からの予定だったらしいけど、大雪で飛行機が運休したらしくてさ。明日からになるって連絡があったよ」
スタッフルームから店頭へ向かって歩きながら、ふたり肩を並べて話す。
「けど大変だよなぁ、馬場店長も新しい店長も……もともとは九州店の前店長がスタッフと不倫して、それがバレてクビになったせいらしいぞ」
「へぇ……」
不倫がバレて……。そんな人の都合で振り回される店長たちは大変だ。
でも不倫はよくないけど、そこまで本能に従えるのはすごいとか、彼氏いない歴6年の私は思ってみたりもする。
「千川、早速お客来たから接客!」
「ぎゃっ!」
その時、せわしなく店内を動き回る藤井さんは、通りすがりに私のお尻をバシッと叩いていく。
って、藤井さん!私も一応女なんですけど!
そう言いたいところだけれど、きっと言ったところで『男みたいなものだろ』と言われることは想像できてしまう。
その上、遠目に見えたお店の入り口にはお客様の姿もあることから、その言葉をぐっと飲み込んでお客様の元へと向かった。