「そうだ。スタッフルームに藤井が居るんだが、二日酔いみたいでな。熱いお茶でも淹れてやってくれ」
「あっ、はい」
仁科さんはそれだけを言うと、倉庫の方へ向かって歩いて行った。
藤井さん、飲みすぎたんだろうなぁ……。明日のことを考えず飲む、お調子者の彼らしい姿が想像つく。
苦笑いで一旦モップを置き、給湯室でお茶を淹れるとスタッフルームへ向かう。
「お疲れ様です、藤井さん」
そう声をかけながらドアを開けると、案の定室内には長テーブルにぐったりと伏せる藤井さんの姿があった。
「おー、千川……おはよー……」
「大丈夫ですか?お茶どうぞ」
「悪いな〜……」
テーブルに置いた湯気のたつお茶に、藤井さんは体を起こしそれをひと口飲むと、「ふぅ〜」と息を吐き出す。
「昨日そんなに飲んだんですか?」
「あー……上坂さんとつい朝まで」
疲れ切った声で答える彼に「朝までですか」と笑うと、藤井さんはこちらを見て少し気まずそうに口を開く。
「……そういえばさ、千川。昨日ごめんな」
「え?」
「ほら、俺ふざけてとはいえお前の……胸を、さ」
それは昨日の、胸に触れた時のことを指しているらしい。突然そのことを謝られるとは思わず、戸惑ってしまう。