「そ、そんな……美人とか、ないです」
「いや、美人だよ。実家で飼ってたサモエドに似てる」
「って犬ですか!?」
確かにサモエドは綺麗な顔をしているけれども!!
ボケなのか本気なのか、咄嗟にツッコミを入れると顔は彼のほうを向いてしまう。
勢いでつい合った、目と目。この心を見透かすような黒い瞳に、どうしてか動けなくなってしまう。
「問題なのはその中身だ。背が高いことをそこまで気にする必要も、周囲の言葉に愛想笑いをする必要もないと思うけど」
気にする必要なんてない?
……なんて、そんなこと。なにも知らないから言えるんだ。
他人事だから言える。なにを言っても、傷つくのも悲しむのも、自分じゃないから。
それまで逸らそうと必死になっていた目を見据えて、睨むように彼を見た。
「……なにも知らないのに、勝手なこと言わないでください」
ぐっと拳を握り、呟いた。その声に含むのは、強い苛立ち。
そんな私から一瞬たりとも目をそらさず、仁科さんはそっと手を伸ばす。