千川翠、26歳。

私は昔から、異性より同性にモテる。



というのも、子供の頃からわりと背が高く、気づけば現在173センチ。

背が高いだけならモデル体型として自慢にもなるかもしれないけれど、肉付きのない薄い体は骨っぽく、胸はほぼない。

『男性にしては綺麗』と言われていた父親そっくりの中性的な顔とすっきりとした茶色いショートカットをした見た目の私は、普段からこうして男性として扱われることが多い。



そのせいか私自身も女性らしい格好が苦手で、仕事中もこうして黒いズボンに白いワイシャツ、グレーのセーターというかわいげのない格好ばかりだ。



そんな私が働くのはここ、株式会社インシープ。

社員総数1300名を超える、ベッドや寝具・家具・健康器具などを扱う国内でも名の知れた寝具メーカーだ。



東京・日本橋に本社を構え、首都圏から関西、九州などにショールームを持っている。

ベッドや家具など展示してある商品を直接見て触ってもらって、その上で購入を勧める、そのショールームの新宿店で私は働いている。



店舗自体の売り上げは、正直イマイチ。

けどまぁ、大きな問題もなく、それなりに平和に過ごせている。