「ぎゃっ!?」



いきなり彼に触れられた、しかもうなじという滅多に人には触れられない場所を。

そのくすぐったさと妙な感触に、驚いてつい手から力が抜けてしまう。



するとそれまで私に支えられていた藤井さんは「うぉっ!?」と声をあげ、結局前のめりに倒れてしまった。

そんな藤井さんを気にとめる余裕もなく、私はうなじをおさえ仁科さんを見た。



「な、なにするんですか……!」

「寝癖がついている。直してこなかったのか?」

「寝癖……?」



言われてから手探りで触れれば、確かにうなじのところの短い髪が一ヶ所だけピョンと跳ねてしまっているのが分かった。



あ、寝癖……だからいきなり触れたりしたんだ。

寝癖がついていたことと、触れられたこと。両方に恥ずかしさを感じ、頬が熱くなる。

そんなやりとりを見て、おじぎをしたままでいた姿勢を戻した松さんは、クスクスと笑う。



「あー、髪短いと寝癖で跳ねちゃうよね。あれ、でも翠くんってずっとショートだよね、髪伸ばさないの?」



純粋に疑問に思ったのだろう。笑顔で問う松さんに私が答えるより先に、松さんの横から顔を出した梅田さんがロングヘアを揺らして言う。