本来なら入社当時にここで教わるはずだったこと。

けれど何年もかけて緩みきった自分たちが改めて教わるとなるとなかなかつらく……これまでが甘やかされていただけだとわかっていても、彼の厳しさに逃げ出したくなる。



それは隣で同じ体勢をとる藤井さんも同様のようで、プルプルと震えている。



「もう無理、俺腰が限界……」

「わ!藤井さん!」



腰が限界をむかえバランスを崩してしまったのか、グラっと前のめりにによろけた藤井さんに、私はついその肩を抱き寄せ体を抱きとめる。



「藤井さん、大丈夫ですか?」



なんとか受け止められたものの、肩を抱くそれはまるで、私が王子、藤井さんが姫かのような図で……。



「お、俺……千川になら抱かれてもいい……」



私の腕の中で、藤井さんはまるで女の子のようにキュンとときめいてみせた。

いや、抱きませんけど……。



「こらそこ……、」



私たちのそんなやりとりに、仁科さんはすかさず厳しい目を向ける。

けれど彼はなにかに気付いたように言葉を止め、こちらへ近づいてきた。



そして突然、その指先は私のうなじにそっと触れた。