小学5年生のときの、バレンタインデー。
初恋の男の子にチョコレートをあげた。
当時、身長160センチ。髪の毛は今と変わらずショートで、兄のお下がりのパーカーやデニムを履いて……と見た目は完全に男の子だった私。
けれど頑張ってチョコレートを手作りして、勇気を出してチョコレートを渡したんだ。
相手は同じクラスの仲のいい男の子。いつもみたいに笑って、軽く受け取ってくれると夢見ていた。
けれど、現実はそうはいかないもので。
『うわっ、気持ちわりー!オトコオンナからのチョコなんていらねーよ!』
その言葉とともに、チョコレートは投げ捨てられた。
グシャグシャになった包みに、その年齢にして知った。
私が彼に恋をすることは、『気持ち悪い』ことなんだと。
それ以来、好きな人が出来ても一切気持ちを表すことはなくなった。
女の子としての気持ちを押し込めるほど、自分から女らしさを奪うように、背は伸び体は骨っぽくなっていく。
だんだんと父に似ていく見た目に、母は喜んで私に男らしい格好をさせるようになった。