「俺にはお前が、受け入れて諦めたフリをしてばかりのコンプレックスの塊に見える」
「え……?」
コンプレックスの、塊……。
バカにするような笑みでもなく、同情するような顔でもなく、向き合うようなまっすぐな目で見つめる彼に、その言葉がズシンと心に沈む。
「っ……ほっといてください!!」
“図星”
一瞬感じかけた気持ちを拭うように声を荒らげてしまう。
そしてぎゅっと雑巾を握り、足早に部屋を出た。
なにあれ、なんなの。
かわいくないって、コンプレックスの塊って、失礼にもほどがあるでしょ!!
昨夜はあんなに優しいと思ったのに、覚えててくれて嬉しかったのに……愛想だけじゃなくて性格も悪すぎ!!
「ふんっ」と鼻息荒くずんずんと歩き、皆がいる店頭へ戻ると、そこには梅田さんと上坂さんが話しているのが見えた。
「あれ、千川は?」
「千川さんなら雑巾取りに行ってくれましたよ」
「あ、お前また千川にやらせたな?すぐそうやって『お願い〜』って甘えるのやめろって」
きっとふたりとも、私が背後にいることには気付いていないのだろう。
叱るような口調で言う上坂さんに、梅田さんは「えへ」とかわいく笑った。