……まぁ、確かに相変わらず背は高いけど。
黒いフラットシューズを履いていても、私の身長は彼らと同じくらいあるものだから、ネタにされても仕方がないとは、思う。
彼らとの会話を切り上げて、荷物を置くべくスタッフルームへ向かう。
ガチャッとドアを開けると、部屋の中では茶色いロングヘアの女性社員・松さんが棚の上のほうにある備品のカゴを取ろうと背伸びをして懸命に手を伸ばしていた。
あ……届かないのかな。
届きそうで届かない距離に手を伸ばす松さんに、彼女より15センチ以上背の高い私が背後から手を伸ばせば簡単にカゴは取れた。
「はい、どうぞ」
それを差し出すと、松さんは私を見てパァッと顔色を明るくする。
「翠くん!おはよう、久しぶりー!」
「おはようございます、松さん」
私にぎゅう、と抱きつく松さんに、頭をぽんぽんと撫でて抱き寄せると、彼女はいっそう甘えるように抱きついた。
「松さんずるい!翠くん私にもハグして!」
コートを脱ぐ暇もなく続いてやってきた女性社員にも抱きつかれ、苦笑いをこぼす私に、通りがかりの男性社員はうらやましそうにこちらを見て笑った。