「ん?なんか千川さん、元気ない?どうかしましたぁ?」
そんな私の顔を覗き込む梅田さんに『そんなことないよ』と否定しかけて、ふと思う。
彼がなにも言ってくれなかった理由は、わからない。
けど、私には見当がつかないことも、恋愛経験豊富な梅田さんや松さんならわかるかもしれない。
そんな期待を込めて、恐る恐る会話を切り出す。
「あ、あのさ……今回の件で『友達の話』を思い出したんだけど」
実際は全て自分の話なのだけれど、それを知られるのが恥ずかしいし情けない。
しかもこのタイミングで話そうものなら、相手の名前を誤魔化したとしても仁科さんとのことだとバレてしまう。
それらの点から、『友達の話』として話し出す私に、梅田さんは興味深く話の続きを待つ。
「友達が彼氏に隠し事をされていたらしくて……彼氏は全くなにも言ってくれなくて、友達も、他の友達と同時に彼氏の隠し事を聞いた、って話で。それって、彼氏はどんな気持ちなのかなって」
どう聞いても、バレバレなくらい今の自分の話だ。
けれど友達のこととして押し通す私に、気付いているのかいないのか、ふたりはうーんと首をかしげる。