「あれ……でも、そしたら仁科店長はどうなるんですか?」



この心に疑問が浮かんだと同時に、私の隣にいた松さんはそれを声に出してたずねる。



「まさか店長からスタッフに降格!?」



本気でそう思っているのか、大声で言う藤井さんに、仁科さんは『失礼なことを言うな』とでもいうかのように睨む。

その鋭い視線に藤井さんが慌てて口を塞ぐと、彼は改めて話を続けた。



「実はこのタイミングで上坂に店長を任せようと思ったのも、仙台店の店長が退職して欠員が出たからでな」



仙台店で欠員……。

それでもって、このお店は上坂さんが店長になる、ということは。



「えっ……つまり、仁科店長が転勤するってことですかぁ!?」

「あぁ、そうなるな」



驚き大きな声を出す梅田さんに、仁科さんは冷静なまま頷いた。



え……

仁科さんが、転勤……?



そんな話、今までひと言も聞いたことがなかった。

なんで、そんな、いきなり……しかも、皆と同じタイミングで聞かされるなんて。



驚きに、頭がついていかない。



……なんでそんな大事な話、してくれなかったの?

こんな時まで私は、皆と同じ?



恋人なのに、好きなのに。どうして言ってくれなかったの?

私には、関係ないことだから?



とめどなく浮かぶ疑問に、私はそれ以上の問いかけは言葉に出せず、ただ立ち尽くすことしか出来なかった。