なんだろう、会議の報告ってわけでもなさそうだし、売上対策の話が出るほど今月は悪くはない。
その表情からいい話題か悪い話題か読み取ろうとしても、仁科さんの顔つきは相変わらずの無愛想なままで、余計わからなくなる。
「先日上坂には事前に話しておいたんだが、この新宿店の店長を秋から上坂に任せようと思う」
ところが、仁科さんから発せられたひと言は、予想外のものだった。
「えっ!?いきなりですか!?」
「上坂も勤務歴は長い。店長としての仕事を全て教えれば出来るだろうと判断して、本人も納得したうえで決定させてもらった」
その言葉に私を含めその場の全員が、仁科さんと、自分たち側に立つ上坂さんとを交互に見る。
「俺は店長って器じゃないって言ったんだけどな……『やっていれば自然と器は出来てくる』って丸め込まれてさ」
少し恥ずかしそうに笑う上坂さんに、仁科さんは眉ひとつ動かさず言葉を続ける。
「リーダーシップも信頼もあるだろうから上手くやれるとは思う。だが今後は、店長ひとりの力に頼ることなく、スタッフ各々が店の力となるように」
上坂さんが、秋からこのお店の店長かぁ……。
確かに、今まで自分たちをまとめてきてくれた立場の人だし、店長になっても上手くいきそう。
……って、あれ?でも待って?
そしたら仁科さんは、どうなるの?