「いてっ」
「仕事中だ。私語は慎め」
それは仁科さんからの一発で、電話を終えたらしい彼は「全員2階フロアに集合」と召集をかけながら歩く。
その拍子に、彼はこちらを見ると、さりげない動きで自分の襟元を締めるジェスチャーをしてみせる。
それはつまり私に対して、『第二ボタンを締めろ』という意味なのだろう。
……気にして、くれてる?
そのさりげない行動ひとつが、ふたりの仲を印すようで、緩む頬をこらえながら私はブラウスの第二ボタンをしめた。
「仁科店長ー、なんですか?全員集めて話って」
それから店内の2階、店頭がよく見える位置に集められた私たちスタッフ全員は、なんの話があるのだろうと不思議に思いながら仁科さんを囲んだ。
一番に口を開いたのは藤井さんで、その問いに仁科さんは咳払いをひとつして私たちを見る。