「重ねていたのは最初だけだ。千川のことを知って触れる度に、ちゃんと俺の心の中には千川がいたんだよ」
「え……?」
「千川が変わっていくうちに、同じように俺の心も変えられていったんだ」
私のことを、見てくれていた。
私を見て、触れてくれていた。
その心の中には、私がいた。
そんな、信じられない。けど、これが彼の正直な気持ち。
「千川のことが、好きだ」
心の底から感じる嬉しさに、私はその胸に力いっぱいしがみつく。
「いいんですか……私で、こんな、弱くて情けない私で……」
「千川だから、いいんだ。弱くていい、泣いてもいい。不安も弱音も、俺の前でだけ見せてくれ」
こうして泣いて、抱きしめられて、あなたに甘えてばかり。
だけどその度こうして、柔らかな声で抱きしめてくれるから。
愛しさは抑えきれなくて、彼の体を抱きしめる。そんな私を抱きしめ返す、彼の胸に顔をうずめた。