「っ……」



瞬間、スマートフォンの画面にポタッと落ちた雫。

指先で拭っても、拭っても、涙は止まることはない。



『ひとりで泣くな』と彼は言ってくれたけれど、無理だよ。

その胸に甘えて泣けるほどの勇気がない

でも誰かを代わりに出来るほど器用じゃない



重ねないで

私を見て

なによりも強く願うのに、拒まれるのが怖くて言葉には表せない。



好き

仁科さんのことが、好き



触れて、笑って、抱きしめて

その目に私だけを映してほしい



言葉に出来ない想いばかりが胸に溢れて、伝う痛みが涙となってこぼれていく。



「ひとりで泣くな、と言ったはずだ」



その時、彼のよく通る声が静かな店内に響いた。



「え……?」

この、声は……?

驚き、涙を拭うことも忘れて、そっと顔を上げる。

すると薄暗い店内の中、そこにいたのは仁科さんだった。



傘も持たず、上から下までびしょ濡れになった彼は、少し苦しそうに息を切らせてこちらを見る。