「えっ!?て、停電!?」



そう、以前仁科さんとの会話でももらした通り、私は暗いところと雷が苦手だ。

なのにこんな日に限って悪天候で停電なんて……!



あぁもう、どうしよう。帰りたいけど帰れない。けどここにひとりでいるのも怖い。

すがるように、デスクの横に置いてあったスマートフォンを手に取る。



誰か、来てくれないかな。でも皆家に着いたところだろうし、こんな雨の中呼んだら迷惑だよね。

職場だし、友達に頼るわけにもいかないし……そう、連絡先の一覧を見ていると、目に留まったのは『仁科了』の名前。



なにも知らないままだったら、迷っても勇気を出して、彼を呼ぶことが出来ただろう。

だけど、今の私にはできない。



どんな顔で、甘えればいい?

きっと呼べば、『大丈夫と言ったくせに』と呆れながらも彼は来てくれるだろう。

そしてまた、抱きしめてくれる。ほしい言葉で包んでくれる。



だけどそれらは全て、“私”に向けられるものではないから。

実感するとまた胸は苦しくなって、込み上げた涙で視界がにじむ。