数度電話で話はしたけれど、彼女は電話の向こうで泣きながら『ごめんなさい』『もう働けません』と繰り返すばかりで。



『……本当は、ずっと気にしてて……大丈夫、って言い聞かせてたんですけど、もう、限界で……』

『……気付けなくて、悪かった』

『仁科店長は悪くありません……私も、気付かないでほしくて、笑うしかできなくて……』



本当は、気にしていた。

言われるたび傷ついて、だけどそんな自分を知られたくなかった。



彼女の押し殺す嗚咽と、涙声で伝える本音にようやく知った。

繰り返す『大丈夫』は、自分自身に言い聞かせていたのだろうこと。



俺が、その心に気付けていたら。

その言葉を信じずに、周りに厳しく目を向けられていたら。



彼女の心を壊したのは、傍観者でいた自分自身だ。





結果、彼女はそのまま仕事を辞めた。

なにかと彼女に言っていた社員も、自分の言葉の重さに気づき、悔やみ、結果退職をした。



入れ替わっていくスタッフたちの中で、今自分に出来ることはなにかと考えた。



同じことを繰り返さないように。

俺は上に立つ人間として、もっと周囲を見るべきだ。

スタッフひとりひとりの言動や表情から、どう考えているのか、なにか抱えていることはないか、一心に読み解く努力をした。