仁科さんは、自分を責めた。

彼女の力になれなかったこと。

彼女の本音を知ってあげられなかったこと。

結果として、彼女の心が壊れてしまったこと。



……そこで、ふと気付いた。

彼女に自分が、重なること。



「だから仁科くんがなにかに悩んだ時、あなたも力になってあげてね」



若菜さんは先ほど仁科さんにも見せた、少し悲しげな笑顔を私にも見せて、「じゃあね」とその場を歩き出す。

ひとり残されたそこで立ち尽くしていると、ひゅう、と吹いたまだ冷たい風が私の短い毛先を揺らした。



若菜さんの話で分かった。仁科さんの、私に対して優しさのわけ。

仁科さんが私を気にかけてくれるのは、私が彼女と重なるから。



抱えたコンプレックスに押し潰されそうな私は、きっと彼女によく似ていて。

仁科さんは、過去に彼女を救えなかった代わりに、今私を救ってくれた。



……あぁ、そっか。

優しさの正体は、後悔だったんだ。