コンプレックスを抱きながらも、隠して笑う。

そんな彼女……杉本さんを仁科さんは気にかけていた。



優しい彼らしい姿が、想像つく。



「……けどそんな日々が続いて、ついに彼女の心は壊れちゃった。いつものように他の人がからかった時に、泣いて、そのまま立ち直れなくなって……仕事も辞めちゃったの」



……私も、似たような気持ちを知っている。

笑われることに慣れて、諦めて、だけど心の底では傷ついていた。



似た心を持った彼女も『大丈夫』、と作り笑いで自分を守っていた。

けれどその殻にも限界はあって、ついにその日はやってきたのだろう。



きっと、周りからすれば“いつも”と同じことを言っただけ。だけどそのひと言に、彼女を守っていた殻は割れてしまったんだ。



「仁科くんは、彼女を救えなかったことをすごく後悔してた。自分に出来ることがもっとあったんじゃないかって、自分を責めて、以来常にスタッフを気にかけてる」

「……そんな、仁科さんのせいじゃないのに」

「えぇ。仁科くんのせいじゃない。それに、力になれなかったのは私も同じ。だから自分を責めないで、って何度も言っているんだけどね……あんまり意味はないみたい」