「ありがとうございました、またお越しくださいませ」



その日の午後、契約を終えたお客様をひと組、頭を深く下げて見送った。

遠くなるお客様の後ろ姿に「ふぅ」と息をひとつ吐き出すと、それまで張ったままでいた緊張の糸が少し緩んだ。



開店から続いていた客足もひと段落……今日はちょっといそがしかったなぁ。

店内へ視線を戻すと、そこでは藤井さんと梅田さん、松さんの3人も仕事がひと段落したようで、伸びをしたりと気を緩めていた。



「今日は開店からお客様続いたねー」

「しかも結構あれこれ聞いてくるタイプの人が多い……あーもう、喉乾燥してきちゃったぁ。お茶淹れてこよーっと」

「あ、梅田さん。俺も飲む!」



わいわいと話す3人を見ていると、自分のすぐ背後にある自動ドアがウィンと開く。

お客様が来た、と再び気を引き締めると、私は慌ててドアの方に体を向けて礼をした。



「いらっしゃいませ」



私のその声に、それぞれに動き出そうとしていた3人も店内後方で礼をして出迎えるのがドアのガラスに反射して見えた。