仁科さんのことが、好き。
その気持ちを実感すると恥ずかしくて、心の中がくすぐったい。
だけど確かに、芽生えた恋心は
ひとつひとつ、私を変えてくれる。
朝、出勤前に立ち寄った駅前のドラッグストアで、ハンドクリームを手に取った。
この時期は乾燥するから、欠かせないんだよね。あ、ついでにリップも買っていこう。
手同様に乾燥しやすい唇を指先で撫でながら、売り場に目を移す。
すると目に入ったのは、化粧品コーナーにあった小さな鏡。
それを覗き込み、改めて自分の髪を見れば、長さが少し伸びた気がする。
……髪、しばらく伸ばしてみようかな。
見慣れるまでは違和感しかないかもしれないけど、たまには。
視線を売り場に戻し、いつもの薬用リップへ手を伸ばしかけたところで、違うものに目がとまる。
それは、『ほんのりとした色づき』と書かれた、ピンクやオレンジなどの色付きリップだ。