忘れたい、忘れよう、で忘れられるわけがなかった。
過去の言葉たちを乗り越えられていないこの心は、今でも痛いまま。
私を、見て
『ごめん』なんて言わないで
離れていかないで
抱きしめてほしかったよ
あの瞬間になにも出来なくても、『これから』の未来に賭けてほしかった。
ひとつひとつ鍵があくように、心に次々と本音があふれていく。
ねぇ、仁科さん。
この腕の優しさも、上司として与えてくれるもの?
……なんて、そうに決まってる。そう分かっていても、それ以上の理由を求めてしまう。
彼とふたり、ベッドの中。
ドクン、ドクン、と少し早いふたりの心臓の音を聞きながら、そっと目を閉じた。