「意外と頑固だな。……なら仕方ない、折衷案だ」
そしてそう言うとこちらに屈み、伸ばした腕で私の体を抱き上げた。
「へっ……!?」
いっ、いきなりなにを……!?
「に、仁科さん!?なにを……」
突然体を抱き上げられ、戸惑い足をバタバタさせてしまう。
そんな私を気にすることなく、彼は無言のまま軽々と運ぶと、薄暗い寝室の中でそっとベッドへとおろした。
「さすがにお前を向こうで寝かせるわけにはいかないからな。それならふたりでベッドを使えばいい」
「え!?」
ふ、ふたりで!?
それってつまり、一緒に寝るということで、それはさすがにいけないんじゃ……!!?
男女がベッドで一晩、ということから一瞬にしてあれこれといけない妄想をめぐらせる。
いや、そんな、付き合ってもいないのにベッドでだなんて、ちょっと待って……!
慌てるうちに仁科さんはリビングの電気を消してきたようで、窓からの月明かりだけが差し込むこちらの部屋へと戻ってくる。
そしてメガネを外してサイドテーブルに置き、なにをするかと思えば……。
「じゃあおやすみ。明日は6時前には起こす」
そう言って毛布をかけて、こちらに背を向け寝てしまった。