「あっ、あー!店頭のポスター曲がってたから直そうと思って忘れてたー!」
それを隠すように、私は棒読みで声を上げると、カップを置きその場を駆け出した。
ま、まずい。まずい、まずいぞ。
こんな顔見られたら、仁科さんのこと意識してるってバレバレだ……!
でも、いきなりあんなふうに距離を詰められたら、そりゃあドキドキもしてしまう。
不意打ちは反則でしょ……。
熱い頬を両手で押さえ、言い訳にした店頭に貼ってあるポスターを見る。
いや、本当はポスターなんて曲がってないんだけどさ……。けどあのまま一緒にいるのは、私の心臓に悪い。
「ん?」
すると、ふと視界に入ってきたのはドアの向こうにちらつく白いもの。
あれ、これって……。
ついそのままふらりと外へ出ると、空からは真っ白な雪が降っていた。
それは気づかなかったうちに結構な時間降っていたようで、道路や街路樹を真っ白に染め上げていた。
「わぁ、すごい……」
寒いと思ったら雪が降っていたんだ。
今年の冬は暖かかったから雪はどうかと思ったけど、初雪だ。
雪、雪かぁ……って、あれ?
銀世界に一瞬見惚れて、ふと気付く。
この雪では、電車は止まってしまっているんじゃないかということ。
「あっ……あーーー!!!」